中学受験・高校受験・大学受験・帰国子女を含む英語教育全般および
教材の出版とテスト会の運営、EQ育成などトータルサポートする田島教育グループ
2012.7.4
前回まで、試験中のパニックの例で心の仕組みについての基礎知識を紹介してきました。
そして、パニックの対処の仕方や予防法までお話しました。
子供たちには、最後に、いかに彼らがラッキーか付け加えます。
人生、いつパニックに襲われるか判らない。
それを早くも体験でき、対処の方法も身に付けられた。
これは一生ものの財産だぞ、と教えてあげるのです。
さて、ここで少し整理しておきましょう。
EQを開発する方法論の入り口として、まず三つの着眼点を指摘しました。
1 心理学や脳科学に纏わる基礎知識を身につける
2 価値観・思想を強化する
3 実体験を重視し活用する
これら三点に着目して、日々、思い描く理想形に少しでも近づくように工夫し努力を重ねて行く。
そして、自らの情動について、より良く理解し、モニターし、コントロールし、
情動の変化から情報をつかんだり、情動を活用して、IQをはじめ他の知能の発揮を高めることもでき、
良好なコミュニケーションを実現し、より社会に有用な存在になってゆく。
結果として、逞しく、しなやかな強い心を持って、夢に挑んでゆける。
そんな手に入れたい自分を手に入れましょうというお話でした。
そして前回までに、1の基礎知識を身に付ける ことのほんの一例をあげさせていただきました。
いずれ、この項目だけで八つ位挙げたいと考えています。
さて今回から、二番目の、価値観・思想の強化 とはいったい何のことなのかお話ししていこうと思います。
価値観などと言うと、ちょっと堅苦しい感じになってしまいますが、私達は毎日の生活の中で
無意識の内に自分なりの価値観で物を見、評価し、行動しています。
単純な例を挙げてみましょう。
朝起きてきたあなたに、奥さんが、「おはよう」の挨拶もそこそこに「あなた、ごみ袋を出してきて」と言ったとしましょう。
あなたの情動の変化はどうでしょうか?
「OK!」と何の変化も無くごみ袋をつかんで外に出て行きますか?
それとも、内心(なんで朝っぱらから、俺がごみ出ししなきゃいけないんだ)
と思いつつ情動の変化は押し隠したまま、ごみを出しに行きますか?
それとも、「なんで俺が起きしな、ごみ出ししなきゃいけないんだ?」
とキレちゃいますか?
その時の体調や、時間的な余裕の有無など、状況に左右されることもあると思いますが、
ここでの情動の動きをまず決定付けているのは、「ごみ出し」についての評価です。
本来、誰の責任なのか。誰の仕事なのか。
本来、家事は夫婦で分担すべきなのか、妻がまず担うべきなのか。
ごみ出し位で、たいそうな議論になってしまいましたが、情動に関する議論で、意外に見落とされるのが、この価値観の部分なのです。
あいつはキレ易い奴だとか、私の夫は短気で困るとか、ふつうの会話で話されることですが、
それは脳や神経回路の問題などではなく、この価値観のミスマッチによって引き起こされる場合も多いのです。
コミュニケーションの中での出来事ですから、性格とか性質とかの一言で片づけて、
後は相性がいいか悪いかに、行き着いてしまいがちですが、
その前にこの価値観の視点でも検討してみるべきではないでしょうか。
ほとんどの情動の変化は、事実の変化から自動的に生ずることは無く、間に何らかの評価が介在している、ということは以前お話しました。
先程の例でキレる場合など、奥さんの言葉に対して、正義に反するという評価が下り、それが強い怒りを引き起こし、
扁桃核が誤作動してしまったと考えられるでしょう。
つまり、怒り易いとか落ち込み易いとか傷つき易いとか等々、情動に関して、
出来れば克服したい傾向を挙げる場合、評価の基になる価値観にも目を向ける必要があるのです。
言い換えれば、、怒りやすい価値観の持ち主であったり、落ち込み易い価値観の持ち主という言い方も出来るということであり、
情動の働くメカニズムについて検討を加える前に整理しておくべき問題とも言える訳です。
しかし、結果として情動のコントロールに支障をきたしたり、良好なコミュニケーションを阻害したりしてしまうことがあるのですから、
EQを向上させるためには、どうしても配慮すべき要素となるのです。
次回は、この価値観・思想の問題が、直接子供たちの勉学に影響を与えた実例をご紹介したいと思います。