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EQの開発③楽観志向を高める工夫Ⅱ EQ開発講座

2012.9.24

楽観性の効用と、その身に着け方について、お話ししてきました。

でも、楽観性は、本当に高ければ高いほど良いのでしょうか。

と言うのも常に100%楽観的である、というのは、まず、直感的にあまり好ましくないと感じてしまうからです。

みなさんはいかがですか?

基本は楽観的でも、多少ネガティブなところがないと、慎重な判断や鋭い批判などは難しいのではないか、と想像されませんか?

これに関しては、実は、明確な答えが出ているのです。

何人もの科学者が実証的に具体的な答えを出しています。

まずこれまで何回かご紹介したバーバラ・フレドリクソン博士はポジティビティ(積極的・楽観的・肯定的なこころの状態)と

ネガティビティ(消極的・楽観的・否定的なこころの状態)の比が3:1以上が好ましいと結論付けています。

この比以上ポジティビティがないと、その人らしい活力ある生活が実現しにくく、この数値を超えると急に能力や個性を発揮でき、

生活が充実してくる事を様々な検証を積み重ねて実証したのです。

同様にジョン・ゴッドマン博士は、結婚に関して5:1以上と導き出しています。

つまり、夫婦が共に満足し一定の幸福感のなかで結婚を維持するためにはこの比以上のポジティビティが二人の間に必要であると実証しているのです。

またロバート・シュワルツ博士は、最適なポジティビティ比は4:1とし、通常は2:1で、うつ病などの病的なポジティビティ比は1:1以下だとしています。

ただネガティビティについては、0を標榜したものは、当然とも思いますが、私が勉強した限りありませんでした。

充実した生活を実現するためには、適切なネガティビティが不可欠だというのが研究者の一致した見解のようです。

みなさんもこうした数字には一応納得されるのではないでしょうか。

ただ問題もないわけではありません。

研究者たちが示してくれた、このような数値は、実際の結果であるという事です。

それを考慮に入れると、私達日本人は、相当ポジティブの方に傾く努力をしなければならないのではないかと私は考えてしまいます。

先程ご紹介した数値は、すべてアメリカの人々を対象にしたものであり、アメリカと日本では文化も違いますし、国民性もかなり違うと思うのです。

つまり、私自身の拙い経験から言っても、日本人の方が、ネガティブ・根暗だと思うのです。

素人の私がとやかく言っても仕方ありませんが、私達としては、目一杯のポジティブシフトを心掛けていいのではないかと思われます。

この分野での、日本の研究者の成果を期待するばかりです。

最後に学力に関して、楽観性・ポジティビティの働きをもう一度整理しておきたいと思います。

ポジティビティが高まると、思考は拡張(broaden)し視野も広くなり、柔軟な洞察を支え、独創性も増すことが実証されていることは以前にもご紹介しました。

一方、ネガティブにシフトすると、その反対で、思考はどんどん狭く(narrow)なってしまうことも実証されています。

ですから、ポジティブであることが、良好な学業成績を修めるための、一つの必要条件と言える訳です。

ところが、現場で教えたご経験のある方ならたぶん同意してくださると思うのですが、成績の良い子は意外にも、ネガティブな子が結構多いのです。

例えば、いつも必要以上に結果を悪く見積もり、不安を抱き続けているような子供です。

そうしたネガティブな心が、自分を奮い立たせ、自身を厳しく監視し、努力を継続させ、好結果を生んでゆく。

それを考えると、ポジティブィティを高めるよりも、逆に少しネガティブの方が学力向上には有利なのではないかと当初は疑問を持っていました。

また、長い間子供たちを見てくると、統計的にどうと言えるレベルではないにせよ青年期以降こころの問題を多少なりとも抱えて相談にこられるのは、

意外にも学業成績の良かった、聡明で良識ある子供の方が多いのです。

こうした様々なことから、今の私はこう結論付けています。

役に立つ、必要なネガティブィティも存在するが、やはり基本は、そうしたネガティブな面も支えてしまうポジティブィティをいかに増やしていくかが鍵だということです。

ネガティブに見える成績優秀な子も、ポジティブィティをもっと増やせれば、成績ももっと伸びたかもしれないと考えるのが、

多くの研究成果を素直に学ぶ姿勢ではないかと思われます。

次回は楽観志向を高める工夫の最終回として、さらにいくつかの方法を紹介していきます。