中学受験・高校受験・大学受験・帰国子女を含む英語教育全般および
教材の出版とテスト会の運営、EQ育成などトータルサポートする田島教育グループ
2012.8.24
EQとは、これまでお話ししてきたように、情動をしっかり識別し、その動きや働きを理解して、
上手に活用したり、必要に応じて調整・管理ができる能力を言います。
このEQをどのように上手く開発するか、についてずっとお話ししてきているのですが、
ここでは、その開発に役に立つ最低限の心理学や脳科学などの知識をご紹介し、
同時に、可能な限りその知識の具体的な活用方法をお教えしているところです。
今回から数回に分けて「楽観性」についてご紹介して参ります。
実はEQを開発する上で最も重要な資質が楽観性だと言われているのです。
この楽観性が低いとEQの向上そのものが阻害され、仮にEQの中に向上したものがあったとしても、
その発揮の大きな障害になる事がわかっています。
資質と申し上げましたが、気質や考え方のことで、楽観的な考え方や楽観的な感じ方や楽観的な見方が身に付いている状態を言います。
研究者達による楽観性の定義をいくつかご紹介すると
「後退や挫折があっても最後はうまく行くだろうという期待を維持できる能力」
「困難に直面した時に無気力や絶望や抑うつに陥らないよう自分を守る態勢」
「人間が自分自身に対して成功や失敗をどう説明するかであり、楽観的な人間は失敗の原因を変更可能な要素と受け止め、
次回は成功できるだろうと考え、悲観的な人間は失敗が自分のせいだと思い、性格だから変えようがないと考えてしまう。」
大体つかんでいただけたと思います。
楽観と悲観についての研究成果をみますと、学業成績や社会での業績や評価、そして病気の罹患率や寿命まで、
非常にはっきりとした大きな差が、確かな統計データとともに示されているのです。
悲観がEQの阻害要因だとすれば当然のことだと思われます。
では、それほど重要な楽観性を身に付けることは可能なのでしょうか。
研究者達は可能だと言っています。
心理学の世界でも、脳科学の世界でも、多くのエビデンスを挙げて、可能である事を証明しています。
しかもその具体的な方法論も挙げている論文も少なくありません。
さっそく紹介していきましょう。
ただその前にひつだけ、強調しておきたいことがあります。
この楽観性を身に付けるということは、EQを開発する上で役に立つのは元より、勉強や仕事で成功する原動力になる訳ですが
それ以外に、今急増している「うつ病」の強力な予防になることが判っているのです。
特に子供たちです。
思春期までに一定の楽観性を身に付けさせることができれば生涯を通して「うつ病」になる確率を大幅に下げられるというのです。
そこでまず子供たちに関するお話しから紹介しましょう。
楽観性を身に付ける前提として、まず、どうして悲観的になってしまうのか、その原因究明です。
米国の心理学会会長を務められたセリグマン博士は、次の四つを限定的に挙げられます。
まず気質の遺伝です。
これはどうしても認めざるをえないようです。
同氏は要因分析でほぼ25%としています。
次は親の悲観志向です。
悲観的になってしまうということは、悲観的なものの見方や考え方が習慣化してしまった状態を言う訳ですが、
脳科学からはミラー細胞へのマイナス情報の蓄積、心理学からは潜在意識へのマイナス情報の蓄積と集約されるようです。
ではどうして蓄積されていくのかですが、まず挙げられるのが親の悲観志向だというのです。
毎日の生活場面で親が悲観志向を示すと、子供はそれをそのまま取り入れてしまうそうです。
ですから、子供に楽観性を身に付けさせるためには、まず親自身が楽観性を身に付ける必要があります。
次に教師の影響が上がります。
現在は子供の接する世界も多様になってきましたから、広く子供の周りの指導者と言った方がいいかもしれません。
具体的にはその「叱りかた」だといいます。
子供は自らの失敗に対する、教師の叱り方をそっくり受け入れて自分自身を批判し始める傾向にあるようなのです。
ですから教師から全面的な批判を受けると、自分自身に対して逃げ場のない批判を始めてしまう訳です。
最後は悲観・楽観を大きく左右するような、重大な体験です。
大きな難題を解決した時などは、楽観を醸成するチャンスになるでしょうが虐待を受けたり、両親が深刻な争いを目の前で繰り広げたりしたら
途方もない無力感を味わい、一気に悲観志向に向かうことは容易に想像できるところでしょう。
こうした指摘から、子供たちに関しては、楽観性を身に付けさせる工夫を実行する前に、まず、悲観志向を予防することが重要でしょう。
次回からより具体的な、楽観性獲得法をご紹介して参ります。