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2012.11.9
前回に続いて情動の働きについて整理していきます。
思考や意思決定に、情動の存在は不可欠である、という事は何度もお伝えし、その働きについても、幾つか詳しくみてきました。
ポジティブな気持ちは思考を広げ、アイデアをたくさん生まれやすくし、逆にネガティブな気持ちは思考を狭め、注意力を強める。
したがって、この知識の活用例としては、問題解決や独創性に富んだ企画の立案などの時には、
ポジティブな情動を呼び起こすようにする事が助けになり、間違い探しやより慎重な取り組みが必要な時は、
ネガティブな情動を引き出すようにすると良い、といったことが挙げられます。
こうした情動の活用例に、前回は記憶力アップ(より正確には、再現力アップ)を追加しましたが、
今回はもう一つ、メッセージ力のアップをさらに加えたいと思います。
思考と情動とが一体となっているということから、コミュニケーションをとる時の大きなヒントが得られます。
よく説明と説得とは違う、などと言われますが、正にこの事です。
説明というのは、相手の理性にばかり働きかけ、相手は、一応理解はするもののなかなか納得してくれないことがある。
これに対して、説得の方は、理性と共に感情にも訴えかけるから、相手が納得しやすいと言われる訳です。
つまり、説明と説得の違いは、メッセージに感情への配慮が含まれているか否かにあるのです。
聞き手の情動を揺り動かすようなメッセージが、よりメッセージ力のある、メッセージと言えるのです。
例えば子供たちに何か伝える時にも、この知識は使えます。
本当に危険な機械で、絶対に触れてはいけない、と伝えたければ、
触ってしまった時の痛さや、血の色や臭い、叫び声など、情動を喚起するように話せばよいのです。
解り易いと評判の良い教師は、こうした知識を授業に活かしています。
合わせて、以前ご紹介した、ボデイランゲージの重要性を科学的に立証する、マレービアンの法則も実践している場合がほとんどです。
声のトーン・強弱、身振り手振り、間の置き方、視線の強弱、表情・・・・・
そして、前回お話しした記憶と情動との結びつきの強さから、所謂、記憶術につながる技術も駆使しているものです。
例えば、巨大なトマトから、元気な熊が飛び出してきた、なんて話す訳です。
子供たちの脳裏には、驚きの映像が浮かびます。
これ一発でOK。
子供たちは、トマトの生産量全国No.1は熊本県と覚えられる訳です。
このことは、子供たち自身も活用できます。
記憶することが容易になるからくり、つまり、強い情動を呼び起こすような映像を使って覚えると覚えやすいという事を、具体的に教えてあげましょう。
しかも、思い出す状況に出来るだけ近い気分で覚える(前回お話しした気分適合記憶力のことです)となおさら良い、ことも付け加えましょう。
受験準備であれば、もちろん、本番に臨んでいるつもりで、ということになる訳です。
理解するまで時間のかかる子もいますが、具体例を挙げ、実際にいっしょに検証していく事を何度も繰り返せば、この原理だけは入って行きます。
一度獲得した情報は、必ずいつか役に立ちます。
実は、私の経験上、このような試みは、かなり威力がありました。
こうした、ちょっとした工夫で点数が変化すると、それが効を奏して、やる気と自信が強まり、眠っていた才能が正に目覚めるようなことが起きることがあるのです。
是非試していただきいと思います。
次回ももう少し、知識の整理をしたいと思います。