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2012.12.29
私が十二歳の時、父が病気で亡くなりました。
入院して三週間も経たない中での出来事で、本当にあっけない死でした。
小学校六年生の三学期が始まって間もない一月末の事です。
この父の死と、「十三歳で一人前」とどう繋がるのか。
これから、順を追ってお話ししていきます。
私には、それぞれ七歳と九歳離れた姉がおりました。
私の小学校時代の数少ない厭な思い出の一つが、赤い自転車です。
二人の姉が乗り古した赤い自転車を、私は乗らされていたのです。
父は、「男は常に何か一つは我慢しなければならないものが無いといけない」
と言い、私にその赤い自転車を乗せていたのです。
しかし、父と私の間には、一つの密約がありました。
中学生になったら、男子用の、五段変速機のついた最新式の自転車を買ってもらう約束をしていたのです。
この約束は、父と私以外誰も知りません。
中学に入学してから、この話をいつ母に切り出そうか、毎日考えていました。
ところが、切り出すどころか、そんな話を持ち出そうと考えていること自体憚られる雰囲気が、家じゅうに充満していたのです。
夜、二階に上がって布団に入っていると、下の方から姉二人と母との話し声が漏れてきます。
階段のところまで忍び足で近づき、聞き耳を立てると、いつもお金の話でした。
上の姉は当時東京の大学まで通っていたのですが、それも諦めなければならないかもしれない、
等と聞こえてくると、自転車の話など、とてもじゃないが触れてはいけない問題だと、私も納得していました。
でも、諦めきれません。
何年も、その日を楽しみに我慢してきたのです。
「秀坊がまたねーちゃんの自転車のってるぞー」
「秀坊は赤い自転車が好きなんだって」
そんな冷やかしは何度もありましたし、ひつこくやられて、つい私が切れてしまい、
大立ち回りになってしまったことも、何度かありました。
何とかして、五段変速のついた自転車を手に入れたい。
次第にそればかり考えるようになっていきました。
そして、一つの方法に辿り着くのです。
どんな方法かは、次回お話ししましょう。